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社説から読み解く日本と世界
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| 新聞、雑誌などの情報検索を行なっている株式会社ジャパン通信社(所在地: はじめに調査した全国紙・地方紙のうち、今回の法改正を好意的に評価しているのは、「産経」と「読売」の2紙。それ以外の新聞は、反対もしくは慎重の立場を採る。総論・前提論と各論点を合わせて、代表的な社説を取り上げる。同じ通信社の配信記事を下敷きにしている各紙については、必要に応じて一紙を取り上げ、その際には、新聞名に下線を引く。なお、調査新聞一覧は最後に記す。 論点この法改正についての論点は、3つの法律それぞれとする。(1)学校教育法-A「規範意識」「公共の精神」「我が国と郷土を愛する態度を養う」を
総論・前提論「毎日」(6/21):いきなり法改正ありきではなく、教育の現状の何が問題なのか、それをどう変えるのか、現行制度でなぜそれができないのか、などを徹底的に検証し、そこから方策を探るべきだと提起してきた。実際、現行法や制度、学習指導要領が壁になって、今回の改正の目的としていること(教育委員会の責任明確化、教員の資質向上など)が阻害されてきたという実情はない。「陸奥」(5/28):今後の教育の在り方や学校の将来像についての展望は示されていない。なぜ(安倍首相が教育再生の狙いとする)規範意識や学力が低下してきたのか、これまでの教育に対する分析や総括がない。だから、声高な主張も、地に足の着かない感じを与える。 (中略)三法案からは、国家による価値観の押しつけや教委への統制強化が心配される。 「河北」(3/30):現在の教育をめぐるさまざまな問題を考えれば、改革の必要性に異論がない。(中略) しかし、法案は現状に対する対症療法としての効果も期待できそうになく、教育現場を活性化させることにも結びつきそうにない。(中略) 国の関与を強め、人事管理を強化することによって、教育を取り巻くさまざまな問題解決ができるとは思えない。 「新潟」(6/21):今回の法改正で再生への方向付けができたとは、とても思えない。(中略) 最も残念なのは、教育の混迷を招いている元凶は何かという本質論議が起き去りにされたこと。学校や子どもは社会を映す鏡。政界や官界、産業界で続発する不祥事が教育に影を落としてはいないだろうか。 「北日本」(5/20):「再生」をいうからには、現在の公教育がどんな状態で、どんな対策を講じるべきかを示されなければならないはず。しかし、首相らの国会答弁は「高い規範意識と学力」「道徳や公共の精神」など抽象的な文言だけで、現状認識も処方箋も具体的には語られなかった。(中略) 国の統制強化で学校が良くなるとは思えない。 「京都」(6/21):国会の審議を振り返っても、国際的に見て現在の日本の教育のどこに問題があり、その原因は何で、必要な制度的改善策は何か、といった「百年の計」に資するような議論は乏しかった。 (中略)結局、今回の三法改正は国や教委の学校管理を強化するという側面ばかりが目立つ。 「神戸」(6/22):教育現場は、国の「改革」に振り回され続けてきた印象がぬぐえない。「ゆとり教育の」導入と排除をめぐる近年の目まぐるしい動きは象徴的。問題があれば、改めるのは当然だが、過去の改革の検証が不十分なままでは現場が混乱するだけ。 「山陽」(3/13):教育行政の国家統制を強める狙いが露骨ににじんでいる。 「高知」(5/19):公教育の改革が急務なのは確か。問題はその中身と手法。改革を進める場合、現状に対する十分な検証が出発点。子どもや教員という「人」が中心になり、時間をかけて形づくられていく教育では特に重要。 どこに問題があり、何が原因なのか。解決していくためにはどういう処方せんが必要で、それを実行した場合にはどういう影響があるのか。データなどに基づく多角的な分析と論議が欠かせない。 ところが、昨年の教育基本法改正に始まる安倍首相の「教育再生」路線では、そうした地道な作業はおざなりにされてきた。 「西日本」(6/21):いじめを苦にした子どもの自殺や必修科目の未履修問題など、教育改革の必要性を痛感させる事例は相次いだ。だが、一連の法改正が教育現場や国民の期待にこたえる教育再生に結びつくのか。疑問は最後まで解消されなかった。 「沖縄」(5/22):安倍首相は、教育再生の狙いを「こどもたちに高い規範意識と学力を身に付けさせる」と繰り返したが、今の学校ではなぜ、できないのかは触れていない。 教育現場が今後どう変わっていくのか。今よりも本当に良くなるのか。首相や伊吹文明文科相らのこれまで(参院審議入り時点)の答弁からはまだビジョンはみえてこない。 「茨城」(5/18):気がかりなのは、教育三法を改正して、どんな教育をやろうとしているのか、先が見えないこと。(中略) 教育とは人と人の営み。法や規則で縛ったところで、人はその通り動かない。現場をその気にさせる改革こそ目指してほしい。 「読売」(6/21):安倍首相が掲げる「教育再生」への足がかりが出来たということだろう。 「産経」(5/18):(教育再生関連三法案は)教育再生のための重要な制度改革。 「産経」(6/21):教師の資質向上や教育委員会改革など、荒廃した公教育を変える重要な制度改革が盛り込まれており、今国会成立の意義は大きい。 論点1 学校教育法「日経」(6/21):(B)学校マネジメントを確立する効果は期待できるが、実際の運用は地域や学校の実情に即して考えればよい。「東京」(5/19):(A)教育学者の中には内心の自由に踏み込まないと法案に明記するよう求める意見さえある。授業や評価の仕方がどう変わるのか、親や教師の心配に対して具体的な答えを出すべき。 「東京」 (6/21):(B)東京都はすでに主幹制度を導入しているが、希望者が少なく、うまく機能していない。中間管理職を増やしてマネジメント効果を上げようという企業的な論理だけでは公立学校の運営は難しい。 「北海道」(5/19):(B)教員の創意工夫の努力や職員室で自由に発言する意欲がそがれてしまうことが心配。 「陸奥」(6/22):(A)規範意識を高めることに異論はない。が、国への愛情は人によって解釈が違って当然だし、国から押し付ける筋合いのものでは決してないはず。政治家は愛を強要するより「愛されるに足る国づくり」に心血を注ぐべき。 「信濃」(6/23):(B)管理職が増えても教員の数が増えるわけではない。安易にポストを増やすと、教員が子どもに向き合う時間を奪う結果になりかねない。 「徳島」(5/18):(B)管理職員を増やせば学校現場はよくなるとはかぎらない。管理強化が進めば、かえって風通しが悪くなり、現場教員の不安が増す一面も否定できない。 「高知」(6/22):(A)「愛国心」や「公の精神」について、教育目標を通じた国による一つの考え方の押し付けは、多様な価値観を否定し、内心の自由を脅かすにつながりかねない。 「宮崎」(5/18):(A)何が国を愛する態度で、歴史の正しい理解とだれが判断するのか。教育基本法改正審議から積み残された課題はほとんど論じられないまま、政府案を認めてしまえば国の考える正しい精神、歴史観を押しつけられる危険性をはらむ。 「琉球」(5/19):(A)「愛国心」にあおられて戦場に駆り出された、あの悲惨な過去を、県民は忘れていない。 「琉球」 (6/22):(A)教育改革は国民に「愛国心」を強制することではない。愛される国造り、そのための教育者と人材育成が基本。 「上毛」(6/21):(A)「国を愛する態度」などについて、教科書検定などを通して国の解釈を押しつけるようなことでは、伸びやかな発想など学校現場から消えてしまう。(中略)思想自由の時代に、国が一定の見方や価値判断を押しつけるようなやり方はそぐわない。(中略)公教育に政治家個人の思いを持ち込むのは厳に慎むべき。 (A´)学校評価についても「文部科学大臣の定めるところにより評価を行う」との条文が盛り込まれている。全国一律の物差しで学校評価となれば、地域の特性や学校の創意工夫が骨抜きとなる事態は避けられない。 「読売」(6/21):(B)学校の組織運営力を強め、教員の意欲を高める効果が期待される。 「産経」(5/19):(B)教育再生に欠かせない制度。 論点2 地方教育行政法「朝日」(6/22):教育委員会に対する文科相の指示・是正要求をどのような時に出すのかはっきりしない。文科相の「私が判断した時」「あらかじめ定義できない」と答えた。これでは文科省の権限が際限なく広がりかねない。万一、発動する場合には、なぜ、是正要求や指示が必要なのかきちんと説明しなければならない。「東京」(6/21):教委が国の意向に従うだけの組織になりはしないか。(中略)教委は私学の教育内容に対し、知事から求めがあれば助言できるようになった。私学の自主性は尊重されなければならず、この運用は慎重であってほしい。 「北海道」(6/21):文科相の考え一つで「指示」が乱発されれば、地域に根ざした教育委員会の活動まで制限されかねない。文科省は、権限発動の際の合理的な基準を策定し、各教育委員会に示すべき。 「北日本」(5/20):地方分権一括法で一度は廃止された文科相の是正措置を復活させたのは、国の関与を強めようという意図。 「京都」(4/1):文科相の強い指導権限が復活するのは、地方分権に反しないのか。首相は地方分権を推進するが、整合性を明確に説明する責任がある。(文科相の指導権限が復活する契機となった)いじめ問題への対応遅れは一部教委だけの問題ではない。文科省にも責任があるのに、それが地方分権に逆行する権限の強化となったのでは、焼け太りとの批判も出てくるだろう。 「神戸」(5/19):文科相の権限の範囲を、児童・生徒の生命保護など緊急事態に限定した国の案に対し、民主党案は教委を廃止して事務局を自治体の首長部局に移し、活動評価や監視機能は別途、新設する教育監査委員会が担う内容だった。 「山陽」(5/19):国が関与を強めればいじめの解消につながるのか。野党は教委から国に報告が上がってこなければ無意味と指摘。 「愛媛」(5/19):政府の想定する子どもの生命にかかわる事態なら、ものをいうのは現場の機動的かつ迅速な対応。懸念を押してまで導入する必要はないはず。 「徳島」(5/18):問題が起きた際に国が乗り出すより、地教委がきちんとした仕事ができるように一層の権限を持たせ、仕組みを強化すべき。 「高知」(5/19):うかがえるのは国による教育統制の強化。高まる保護者の不安や不満に乗っかって、一気に関与を強めようとしているようにみえる。 「西日本」(5/20):いじめを苦にした自殺や必修科目の未履修など一連の問題で「見て見ぬふりをする」ような教育委員会の体質が厳しく批判されたが、文科省は適切な指導・助言をしてきたのか。国の権限を強めれば、防げることなのか。 「読売」(6/21):「国の統制が強まる」と批判する声もある。しかし、地方に見過ごせない落ち度があった場合に是正に乗り出すことは、むしろ国の当然の責務。 「産経」(5/19):文部科学大臣の是正指示権などに対し、「国の権限強化」と反対する議論が注目されがちだが、法案は事務方任せの教委の体制を見直し、改革をうながすもの 「産経」(6/21):教委の機能不全ぶりについては、いじめ問題でも明らかになった。現状は、問題が起きた際には学校現場を支援し、解決に尽くすという本来の責務を果たしているとは言い難い。むしろ、責任を現場に押し付け、実態を隠蔽することさえあるのが実情。一部教職員組合となれ合い、毅然とした指導ができない教委も相変わらずある。教委改革は、こうした戦後の教育界の体質を変える意味がある。(中略)教委の機能復活なくして、公教育への信頼は取り戻せない。 論点3 教員免許法および教育公務員特例法「朝日」(5/19):講習の内容によっては、思想や信条で教師を選別することにならないか。その不安が消えないそもそも、10年ごとの講習にどれだけ意味があるのか疑問。現在の研修を充実させる方が効果的。「日経」(6/21):免許更新制は文科省による一元的な教員養成・登用システムの堅持を前提にしており、教壇に幅広い人材を受け入れようとする流れとは必ずしも一致しない。 「東京」(6/21):教員に免許更新制が必要かどうかという根本的な疑問はぬぐえない。専門性でいうなら医師や建築士はどうなのか。不適切な人を外すことは現行制度でも十分にできる。教員管理の手段と批判されないよう、手続きの公正さと透明性を確保すべき。 「北海道」(6/21):免許更新できなければ、教員は失職する。身分が不安定になれば、優秀な人材が教職を敬遠しかねない。教員の日常の活動が委縮してしまうことも心配。 「陸奥」(6/22):「時代に応じた資質の確保」を導入の根拠としているが、社会情勢に即応した教育を実践するための知識や能力は、日々の業務の中で培っていくのが本筋。 「秋田」(5/20):現在でも初任者研修、十年研修といった法廷研修のほか、都道府県ごとにさまざまな研修がある。さらに必要だというなら、既存の研修を充実させればいい話。 「信濃」(5/22):年間三十億円余りの講習費用は個人負担か、国や都道府県が負担するのか決まっていない。現在の十年目研修との調整もこれから。 「京都」(5/19):「不適格教員」は免職などの処分がある一方で、勤務実績の優秀な教員は講習が免除される。判断基準は何か。恣意的にならないか、心配する声があがるのは当然。 「信濃」 (6/21):全国には約五百万人の教員免許保持者がいる。「ペーパー教員」も含めて、原則全員に講習を施すだけの予算と態勢と意味があるかも疑問。いったん取得した職業資格を、教員に限って時限制に変える以上、他の資格との違いを国民に納得させ、理解を得る必要がある。 「神戸」(6/22):教員の技量向上を目指すことに異論はないが、この内容では費用や労力の負担が尋常ではない。経験十年の教員も、三十年のベテランも、一律に課す必要が本当にあるのか。 「西日本」(5/20):指導力不足の教員は確かに問題だが、ほとんどの教員は学校現場で懸命に汗をかいている。ただでさえ、忙しい教員の新たな負担となったり、現場が委縮する懸念はないのか。 「南日本」(5/18):制度設計次第では画一的な教師像が求められる恐れもあり、踏み込んだ議論が必要。 「琉球」(5/19):講習が国主導で行われ、自主性・自律性のない、国にとって都合のいい教師づくりにならないか。 「読売」(6/21):問われるのは講習の中身。実際の講習と評価についての文部科学省による明確な認定基準の作成は必須。(中略) 不適格教員の対処について、教育委員会には厳正な運用を望む。 「産経」(5/19):教員はとかく狭い学校現場に閉じこもりがち。マンネリ化せず、最新の知見で教壇に立つような講習方法が必要で努力を惜しむべきでない。 論点4 審議過程、予算など「朝日」(5/19):それにしても、随分と急ぎ足。通常は1年程度かける中央教育審議会の答申もわずか1カ月でまとめさせた。「突貫工事は手抜きになる危険がある」との批判が、審議会の委員から上がったのも当然。「朝日」 (6/22):それにしても、安倍首相の教育改革では、不思議なことがある。教育予算について何ら手だてが講じられていないことだ。(中略)教育への公的支出を見ると、日本は先進国の中でも低いレベル。 「毎日」(6/21):迫る参議院選挙で与党の実績として掲げるべく「今国会で成立」を至上とされ、論議未消化の印象を強く残したまま成立。 「北海道」(5/19):教育再生の第一歩は、優秀で意欲ある教員を育て、教員や学校の力量を高めること。ところが、全国の国公立大の教員養成学部の志願者は減少傾向。文科省は、教員給与を一般公務員並みに抑制することや、教員数の削減を検討している。国の教育現場への支配を徹底を目指す安倍首相流の教育改革では、優秀な人材が「教育」に背を向けてしまうのは明らか。 「河北」(3/30):本来、対立意見を調整し、打開策を見いだしていくのが中教審の役割のはず。徹底した審議の末の(文科相の関与強化について容認と反対の)両論併記ならまだしも、審議を尽くすことなく政治日程を優先して答申したのでは、存在意義が問われる。 「陸奥」(5/28):公立の小中学校では、今後十年以上にわたって大量退職が続く。行政改革推進法による教職員削減が続く中で教員の質と量両面での低下が懸念される。教育現場から活力が失われる事態を招いてはならない。 「新潟」(6/21):法律の完成度が低いことは、参院委員会で二十二項目もの付帯決議が付けられたことからも明らか。三法だけでは教育再生の展望が見えないということ。決議に盛られたのは�教育予算の拡充�少人数教育拡充と教員定数の改善�学校評価ガイドラインは序列化を招かないように�学校耐震化の促進-など、いずれももっともな内容。どれも予算の裏付けが必要。しかし、安倍首相は、教育予算の増額について言質を与えず、「真に必要な財源の確保を約束する」と述べただけ。それを述べるのが首相の役割。 「信濃」(6/23):最も大きな問題は、お金も人も増やさず、現場の頑張りだけを期待する改革になっていること。(中略)行政改革の名のもとに、政府は教員定数を減らし、評価に基づいて給与に差をつける方針。 「京都」(6.21):学校教師が報告書づくりに追われ、児童生徒に向き合う時間が減るような本末転倒の事態を防ぐためにも、人員増を含めた予算的配慮が要る。法の成立で具体策は今後、文科省が定める政省令などに盛り込まれる。省益がらみの関与には厳しい監視が必要。 「神戸」(6/22):改正教育三法案は、参院に移ってから年金記録不備問題もあって、審議がかすんでしまった感が否めない。教育は関係者や保護者だけにとどまらない問題だが、国民の目に議論を尽くしたと映っただろうか。 「愛媛」(5/19):首相の指導力を発揮するのであれば、まず国内総生産(GDP)比で先進国中、最低レベルにある教育費の公的支出を大胆に見直してはどうか。 「西日本」(6/21):三法案は衆院を通過する際に「教職員定数と教育予算の拡充に努める」など十一項目の付帯決議が付いた。参院で成立したときも、二十二項目に及ぶ付帯決議が可決された。法案そのものがスピード優先の生煮えであり、与党議員にも少なからぬ不安や不満がくすぶっていることの表れではないか。反対論や慎重論を押しきった拙速審議のつけが、教育現場に回るようなことがあってはならない。 「宮崎」(5/18):これまでの国会審議は文部科学省からも「拍子ぬけ」との声が出るほど論議は低調だった。夏に控える参院戦に向けた政権の目玉法案という政治的な意図も見え隠れし、教育の在り方を国に「白紙委任」するとしたら危険極まりない。 「読売」(6/21):教育再生を実効あるものにするためには財政面での配慮も必要。 「産経」(5/19):審議などでは旧態依然とした大学の教員養成課程の見直しも課題とされた。養成、採用、研修を通し、教育界のしがらみにとらわれず広い視野で子供に向かい合う教員を育てる態勢をつくらなければならない。 解説と寸評安倍首相の掲げる「教育再生」に対して、2紙を除く圧倒的多数が反対や危惧 を表明する。それらを通して見えてくるのは、安倍首相の価値観や政治思想を どう捉えるかということである。いいかえれば、各紙の国家観や理想とする社 会像が如実に表れている。教育という問題は、人を人とたらしめる尊い営みで あり、社会の根幹をなすものである。逆に、使い方次第では危険な結果をも たらしかねない。各法律の制度的、技術的視点だけでなく、教育の目的は何か というような観点で読むと、各紙の立場がよりはっきりするのではないか。以下、総論と各論点を簡単に見ていく。
(1)総論・前提論
今回の三法改正に反対する各紙に共通するのは次のような論理。 今に至るまでの教育のどこに問題があったのか総括がない → そして、そ の総括を受けてどのような教育を目指すのかがはっきりしない → だから こそ抽象的な議論になる → それでいて、国家の管理・統制だけは強まっ ている 細かく見ると、「総括」については反対派の中でも、地方公聴会での発言を引 いて、「それほどひどいものなのか」と疑問を持つグループと「大きな問題を 抱えている」とするグループに分かれる。前者の代表格は「毎日(6/21)」「東 奥」、後者の代表は「河北」「高知(5/19)」。ただし、「毎日」については、今回 改正された法律に原因があるのではないという記述。 ところで、混乱している教育現場、疲弊する教員について取り上げている新 聞もあった。「東奥」「陸奥(5/28)」「新潟(5/19)」「徳島」などであるが、その中でも青森県の2紙が詳細に書く。教育のこととなると、何かと学校批判、教員批判に陥りがちなわれわれ市民にも、反省を促す重要な情報を挙げている。 賛成派2紙のうち、「読売」は淡々とした受け止めだが、「産経」は積極的に 評価する。教育問題についての従前からの主張がほぼそのまま受け入れられ たからであろうか。 (2)学校教育法 論点のうち(A)「規範意識」「愛国心」-とりわけ愛国心-について、反対派 は一様に危惧する。その中でも、その歴史を踏まえた「琉球(5/19)」の主張は他紙とは一線を画す。また、「国を愛すことを強制するより、愛される国造りに力を注ぐべき」とるする「陸奥(6/22)」「琉球(6/22)」には説得力がある。 そして、「上毛(6/21)」をはじめとする通信社の配信記事を基にしている各紙で学校評価の点にも触れているが、独自の視点で興味深い。なお、この点に関して賛成派2紙は触れていない。 (B)「副校長、主幹教諭等の創設」については、賛成派2紙と反対(慎重)派の中からも「日経(6/21)」が好意的に受け止めるが、残念ながらその理由は書かれていない。反対派各紙は「学校や教員の自由は発想が失われる」という大意で共通する。「東京(6/21)」が東京都の実例を取り上げているのは読者の理解を高めている。 (3)地方教育行政法 「国の教育委員会への指示・是正要求権の新設」について、反対派からは激しい批判が相次ぐ。指示や是正要求の合理的な基準について、そして、地方分権との整合性の問題が主要な問題点となっている。しかしながら、各紙の記述は多彩であり、興味深い。「そもそも国は(いじめや必修科目の未履修について)すべきことはしてきたのか」と疑問を投げかける「京都(4/1)」「西日本(5/20)」。「東京」(6/21)は私学の自主性についての不安を抱く。また、「愛媛(5/19)」「徳島(5/18)」は「学校現場や地教委の対応こそが重要であり、それを強化すべき」と説く。そして「神戸(5/19)」のみ民主党案について触れている点は特筆すべき。 一方の反対はこの指示・是正権の創設を当然のこととする。なかでも「産経(6/21)」は教委の抱える問題点について切り込んでいて興味深い。賛成・反対を超えた次元で考察に値する点であろう。ただし、教委や教職員組合を目の敵にしているかのようで、やや冷静さに欠くことは否めない。 (4)教員免許法および教育公務員特例法 教員免許の10年毎の更新制については、内容のインパクトもあり、他の改正内容と比しても、国民の認知度は高い。
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